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「認知機能の発達とその支援について」五藤博義氏(ふぁみえーる)

2012年12月21日

五藤博義氏

師走の日曜日、発達障害児に関する情報共有サイトふぁみえーる主催のセミナーに伺った。
はじめに説明しておくと、ふぁみえーるの運営は、障害者就労支援業を展開する社会貢献型企業である株式会社ウイングルであり、未就学児向け発達支援センター・就学児向け学習支援教室をサービスとしているLeafも展開している。東京本社の会場には、40名ほどが集まっていた。

さて、本日の講師は、こども脳機能バランサー開発者の五藤博義氏(レデックス認知研究所)。「認知機能の発達とその支援について」というテーマで、ご自身の30年以上に渡る学びの研究者視点から、発達障害の専門家の話をあちこちに取り入れながら、認知機能と発達障害について説明された。

講義の中では、自社で開発された教育ソフト こども脳機能バランサーを実際にデモンストレーションしてみせた。五藤氏自らサポートの回答もされているという。
コミュニケーションに課題を抱える子どもにソフトを使用する機会を与えた結果、半年後には全ての子供について
問題行動が改善された という活用事例や、日常生活で困り感のある子どものグループそれぞれに認知機能の改善がみられたという事例を紹介し、
    「意外と子供達は生活の中で、苦手とする認知機能を使っていないのかもしれない。
      だから、遊びながら得意でない認知機能を鍛えることによって、凄く伸びる可能性があるのではないか」
という仮説を述べられた。

また、ご自身のADHDや感覚過敏の逸話も披露され、特に感覚過敏については親御さんはあまり認識していないが
本人は大変困っているので理解してあげて欲しいと何度もおっしゃっていた。
単純だけれど遊び感覚のあるアプリケーションは、分析結果も備わっており、親子でゲーム感覚で楽しめそうである。
ぜひお試し版を使ってみてはいかがだろう。

終わりに発達障害関連のネットワーク活用ということでいくつかのサイトを紹介された。ツイッター(@gotoledex)では
既に多くのフォロワーに支持されている五藤氏は、最近では「発達障害・知的障害に関する情報交流コミュニティ
ヴァラエティカフェ」を立ち上げられたそうだ。ふぁみえーると共に同じ思いを持つ人達の情報共有の場がまた一つ増えた。

講義中は熱心にメモを取りながら聞いているお母様方の姿が印象的で、質疑応答も、細かな質問が沢山出ていた。
多くのお母様方は、Leafで療育を受けている方達であるという。恐らくは就学前や小学生など小さなお子さんを持つお母さん。
このような若いお母さん達が、いったいどのようなトリガーで、自分のお子さんは発達障害なのでは?と考えるようになった
のか、とても気になった。

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以下は筆者の備忘録です。講演内容をもっと知りたい方はどうぞ。
講師の後藤氏のご好意により、講演で使用したスライドもシェアしていただいた。

 

http://www.slideshare.net/gotoledex/12-1216-goto-seminar

~認知機能について

・認知機能は学びとかなり結びついている。
・認知機能というものは人によって(先天的・後天的)個体差がある。神経細胞は常に入れ換わっており、
  認知症でさえ、トレーニングにより改善されるということが判っている。
・非常に流動的で、一生変わり続ける。
・人とのやり取りなど、環境との”相互作用”で変わる。
・発達段階(成長段階)があり、青年期になるまでに飛躍的に成長する段階がある。そのような環境に置かれた時に
  初めて学べる。それが上手くできない、あるいは普通の子より発達段階に到達するのが遅いのが発達障害。
・色々な認知機能があり、それぞれに成長段階がある。
・認知機能はそれぞれ関係していて繋がっている。
・高次脳機能(ヒトらしい脳の働き)は低次脳機能(基本的脳の機能)がないと上手く働かない。
・人にはそれぞれ得意な認知機能、タイプがある。
  ー 視覚優位
  - 聴覚優位(音声情報は時系列なので、ワーキングメモリーが必要)
  - 右脳(空間認知・運動)と左脳(コミュニケーション)

~認知機能障害について

   先天的なものとして発達障害。後天的なものとして、高次脳機能障害、うつ病、統合失調症、認知症がある。
 うつ病や統合失調症は元は病気であるが、長引くと器質性障害となり、非常に複雑な二次障害になるので注意して欲しい。

~発達障害について

・DSM-Ⅴが認められた。
・発達障害の特性を知るというよりも、全ての人間がそれぞれの認知機能が凸凹であるということ。
  そこで支障が出てくると発達障害となる。”この人はアスペルガーだ”というよりは、アスペルガーの傾向がこのくらい。
  ADHDの傾向がこのくらい。というような感じ。
・発達障害で言われる困り感については、本人には困り感はない。
・感覚過敏は本人も困っているが、保護者は認識が薄いので理解してあげること。

・年齢ごとに発達の課題がある。たとえば、生まれてからは愛着。安心していられること。
   3歳には自立。10歳には自尊感情というように。この自尊感情は一番大事。
   自閉症やアスペルガーは愛着、後追いが遅く、低学年や高学年になってから遅れて出ることがある。
   心の理論(相手の立場に立って考える)についても、遅れているため、それが身についた時に
 周りの悪意に始めて気づき、非行に陥りがちである。

・学習障害については、原因を見極めて対処することが大事。代表的なケースでは、学習障害(読めない、書けないなど)が
 原因で、多動などの症状が出ることがある。その際にADHDの薬が投与されると逆効果。

~学びのポイント
・本物性:実際の生活に結び付ける。
    分数→食べ物を分ける。
・足場かけ:自分ではできないことが、それを使うことでできるようになるもの。
    地図を見る時に、方位スケールを使う。話す代わりにVOCA(絵カード)。

~こども脳機能バランサーの活用実践事例
1)
対象:コミュニケーションに課題を抱える子 小1~中3の14名
期間:2010/6-2011/1
内容:こども脳機能バランサーをコミュニケーションを促進する補助道具の一つとして使用。
結果:半年後には、全ての子供について問題行動が改善された。

2)
対象:日常生活で困り感のある子122人。うち協力者、データ提出61人。アンケート提出74人。
期間:2012/1-3
内容:グループに分けてこども脳機能バランサーを使用。
結果:ADHD(注意欠陥多動)系/自閉症・アスペルガー系/LD(学習障害)系/精神遅滞系のグループそれぞれに
        認知機能の改善がみられた。特に知的障害については、大きな改善が見られた。
        アンケートでは、言葉・多動性・読字・知能全般に改善感が多くみられたという回答があった。

~その他

・宮尾益知氏によれば、”アスペルガーは究極の男性脳” 
  ”タレント・新聞記者はADHDだらけ。医師や法律家はアスペルガーだらけ。”

・昔はコミュニケーションは必要なかった。狩猟の時代は獲物を獲ってくれば良く、男女の役割分担ができていた。
  また、徒弟奉公では、口頭で教えるよりも、見て覚えた。一人でできる仕事も多かった。
  時代が変わり、チームプレイが必要になり、コミュニケーションが必要となった。

・高度成長、技術、モノ作りには限界がある。これからは、それぞれの個性を活かすことができれば、
  世の中は廻っていくのではないか。

・朝食には味噌汁を。
  肝臓は体内時間をつかさどり、たんぱく質を分解する臓器。朝はたんぱく質を採ることで、体内時間が目覚める。
  糖質だけの朝食は良くない。

以上 

関連リンク
・ふぁみえーる 次回イベント 1月26日(土)「学校お悩み相談会」学校の選び方や学校の先生との付き合い方について
https://famiyell.net/event

 

文・写真 高田敦子